
売り上げを上げるために、オーナーは集客に力を入れようとします。しかし、チラシにしろ、フリーペーパーにしろ、うまくいくとは限りませんし、何万円ものお金をかけたのに一人も集められなかった、なんてこともありえます。
どの業界でも集客コストが上がっています。集客コストとは、具体的にはCPO(一人当たりの顧客獲得コスト)です。たとえば、10万円の広告費を使い10人の新規客を集めたとしたら、CPOは1万円になります。
このCPOが上昇すると、コストを回収するまでの期間が伸びてしまい、経営的にもよろしくありません。
CPOが1万円、客単価が5,000円なら2回目の来店で回収できますが、CPOが1.5万円になれば、3回目の来店で回収となります。失客するお客さんもいることを考えれば、回収には来店回数をもっと増やす必要があります。
乱立する競合、減りゆく人口、不景気による財布の紐の締め付け、これらを考えたら、CPOは上昇していくと予想できます。現に、美容業界では上昇しているはずです。
集客が難しくなるほど、相対的にフォローの価値は上がる
一人失客したら、その分を新たに補わなくてはいけません。つまり、お金をかけてまた集客しなくてはいけないのです。売り上げが減るばかりか、コストまでかかります。ここで仮に失客を食い止められたなら、売上は維持でき、新たなコストもかけずに済むのです。
お客さんが一人減るのと維持するのとでは、経営にあたえるインパクトが全然違うのがお分かりいただけるでしょうか。CPOが上昇すれば、インパクトはさらに大きくなります。相対的に、失客を食い止めるフォローの価値は高まるのです。
失客を減らすインパクト

最も失客するタイミングは、初来店から二度目の来店へ移行する時です。加えて、二度目に来店するまでの時間も大切です。
書籍『1回きりのお客様を100回客に育てなさい!』(著者 高田靖久)にこんな記述があります。
このことから私が言いたいのは、初来店から3ヵ月間は、ニュースレターなどを通じて徹底的にフォローをし、再度来店してもらいましょう、ということ。それだけで固定客になる率が7倍も上がるのですから。少額のシャンプーのみ、トリートメントのみでもいいのです。
通販会社で有名な「やずや」は、3ヵ月の間に、なんと10回もフォローをしているのだとか。フォローには、そこまでする価値があると知っているからです。だからこそ、あそこまで大きな会社になれたのです。
ちなみに「やずや」は、3ヵ月間、以下のツールをお客さんに送っています。
・お礼のハガキ
・「食べ方」についてのハガキ
・「よくある質問」についてのハガキ
・「体験談」についてのハガキ
・「成分」についてのハガキ
・「続ける理由」についてのハガキ
・「商品情報」についての封書
・「スタッフの紹介」についての封書
・「会社情報」についての封書
・ニュースレター
参考:書籍「社長の知らない 秘密の仕組み」(著者 橋本陽輔)
関連記事:紹介を増やしたければ、ニュースレターを発行しなさい
集客に時間とお金がかかるのは、フォローをしてこなかったツケ
フォローをしっかりとしていれば、最小限の失客で済み、集客にかけるコストも最小限で済みます。穴が空いたバケツだと、いくら水を入れても穴から流れていってしまいます。まずは、穴を閉じることを最優先にしましょう。バケツに入れる水道代のコスト(集客コスト)は高くなりつつあります。穴を閉じる価値は日に日に増しているのです。
関連記事:リピートしたくなる美容室を作りたければ、ニュースレターを発行しなさい
集客手段は変わるが、フォローは変わらない

集客手段は、新規メディアの登場やテクノロジーの発展に応じて増え、主流となるメディアも変化してきました。媒体は、チラシ→フリーペーパー→Googleマイビジネスへと移り変わっています。
一方、フォローをするための手段はどうでしょうか?
ハガキやニュースレターといったツールが昔も今も主流で変わっていません。ニュースレターをマーケティングに取り入れることを提唱したのは、神田昌典氏と小阪裕司氏のお二人です。20年ぐらい前でしょうか。ハガキはさらにずっと前から、フォローの手法として知られていました。
おそらく、フォローに使われる主なツールは、今後も変わることはないと思われます。変わらないのですから、一度やり方を覚えてしまえば、あとは、難しいことは何もありません。
集客手段は変わるのにフォロー手段は変わらないワケ
集客メディアは、時代とともに移り変わっていきます。新しいメディアが登場するからです。
新しいメディアは、その収入源を広告枠から得ようとします。新進気鋭のメディアは、注目されている分、広告への反応も良好なことが多いです。
私は広告関係の仕事もしていますが、ほぼ例外なく、新しいメディアの広告は反応が高いです。しかし、どんなに反応が高い媒体でもいつかは廃れていき、広告の反応も鈍くなります。栄枯盛衰です。その頃になれば、また新しいメディアが登場して賑わいを見せ始めます。ですから、効率よく集客したければ、常に旬の媒体を追いかけておく必要があるのです。
新陳代謝の早い集客メディアに対する一方、フォローに使われるツールは、はがきやニュースレターであり、変わらぬ味を提供する老舗のごとく変化がありません。SNSを併用して使うといった新しさが加わってはいますが、メインの座をほかに譲ってはいないのです。
私が思うに、結局のところフォローは「気持ち」が問われているからです。気持ちを形として表しやすいのがアナログツールなのです。ニュースレターは、他の媒体と比べても手間暇がかかります。効率よりも気持ちを優先しているからこそ、ニュースレターを発行しているわけですし、その気持ちがお客さんにも伝わるのです。手間がかかるツールにもかかわらず効果があるのではなく、手間がかかるツールだからこそ効果があるのです。
集客よりもフォローのほうが売上増への近道
常に新しい媒体が登場する広告媒体。集客は、移り変わりの激しい広告を攻略していかなくてはなりません。それよりも、不変的なフォローを攻略するほうが売上増への近道です。しかし、人は集客へ目が行ってしまうものです。売上を上げよう考えた際、99%の経営者は広告をどうしようかと考えるでしょう。
なぜ、フォローを軽視し、集客を重視するのか。それは、因果関係の明瞭さです。
人は、因果関係がハッキリしているものを好みます。その点、広告はハッキリしています。広告を出せばその日から予約の電話がかかってきます。費用対効果が分かりやすいのです。
一方、ニュースレターは因果関係が見えにくいです。長期的な集計を取らなければ、その効果になかなか気づきません。これはニュースレターに限った話ではなく、フォロー全般の活動に言えることです。
フォローは常にその重要性が見過ごされています。これに気づき取り組んだ人だけが、目立たずこっそりと儲けるのです。
関連記事:美容室の売り上げを上げたければ、ニュースレターを発行しなさい