ニュースレターを直訳すると、「新しい」+「手紙」になります。簡単に言えば、新着情報誌です。そんなニュースレターがビジネスツールとして認知され、特に接客業から支持を得ています。
なぜニュースレターは普及したのか。それは売上増進に貢献するからです。
ただ、ここで誤解してはいけないのは、チラシやDMのように配布した直後から何かしらのレスポンスがあるわけではありません。ニュースレターは、直接的な売上増はもたらしませんが、間接的な売上増をもたらすのです。
どういうことか。
分かりやすくニュースレターのメリットを列記にします。
ニュースレターを出す5つのメリット
- セールス時の反応率が上がる
- 失客率が下がる
- 口コミ・紹介が増える
- 継続年数が伸びる
- お客さんと仲良くなれる
結果、広告宣伝費は下がり、売上が上がるのです。
ニュースレター、2つの目的
なぜ、これほどのメリットがもたらされるのか。ニュースレターを通じて、お客さんとの人間関係が育まれるからです。
ニュースレターの目的の一つは、この人間関係を育むことにあります。人は、人間関係ができている人から、物を買い、物を買い続けたいと考える生き物です。
想像してみてください。
人間関係のない人から商品を勧められるのと、信頼している人から商品を勧められるのとでは、どちらから商品を買いますか。後者ですよね。
人間関係のないお店と好感を寄せているお店とでは、どちらのほうに通いますか? これも後者ですよね。
冒頭で、ニュースレターは特に接客業から人気があるとお伝えしました。それは、接客業はほかのビジネスと比べて、お客さんとの接点が多く、人間関係を育むことへの感度が高いからです。きっと、お客さんとの人間関係が売上に影響を与えることを肌で感じているのでしょうね。
もう一つ、ニュースレターには目的があります。それは教育です。
教育とは、必要性を教え、感性を育てることと定義しています。商品を買う人と買わない人がいるのは、この必要性と感性の差から来ます。たとえば、トリートメント剤を買う人と買わない人がいたとします。買わない人は、髪への悩み(必要性)がないか、美への関心(感性)が薄いかのいずれかです。
必要性や感性がないところに、いくら訴求しても人はものを買いません。そこで、ニュースレターを通じて髪に関する情報やトリートメント剤を使う必要性を伝え、感性を育てていきます。教育されたお客さんは、必要性に気づき、美への関心が高まり、“買う理由”が生まれます。結果、セールスした商品を買ってくれるようになるのです。
こうした教育活動を続けることで、セールス時に反応が得られる下地を作っていくのです。
人間関係と教育。この二つを築いていき、売上増の基礎を作っていくのが、ニュースレターの目的です。
ニュースレターの書き方
ニュースレターの目的がわかったところで、次は実際の作り方について解説していきます。
ニュースレターでは、以下の5つの情報を載せていきます。
- トピックス
- 自己開示
- 役立つ情報(教育)
- お客様の声
- ミッション
1.トピックス
最近あった出来事を載せていきます。
たとえば、マスコミに取り上げられたり、催しが行われたりしたら、その報告をしましょう。また、これから行われる催しがあれば、その告知をします。
ここを充実させられると、活気のあるニュースレターになります。
2.自己開示
スタッフ一人一人がプライベートな話を載せていきます。たとえば、最近見た映画や家族のこと、そういった個性や人となりが見える話を載せていきます。
心理学的にも、プライベートの話をする自己開示は、親近感を与えることがわかっています。
3.役立つ情報(教育)
専門家として、お客さんに役立つ情報を伝えていきます。
美容室であれば、髪について、ケアについて、顔の形に応じた似合うヘアスタイル、今流行りのヘアスタイル、よいヘアケア商品の見分け方。こういった役立つ情報を載せていきます。
4.お客さんの声
お客さんからいただいた感想やクレームを、許可を得て載せます。アンケートなどを実施して、声を集めます。店頭で集めるのもいいですが、ニュースレターの中に用紙を同封するのがよい手です。
お客さんの声を集める狙いは、ニュースレターにお客さんを参加させることにあります。一度でも参加すれば、お客さんは一気にニュースレターへの愛着を抱くようになります。お客さんが参加したくなるような企画を考えて、ニュースレターにて案内しましょう。
5.ミッション
もし、お店に何かしらのミッションがあれば、そのミッションを伝えます。たとえば「◯◯区を日本一ヘアスタイルのかっこいい街にする」と。
ミッションがあることによって、お客さんと価値観を共有できます。価値観が共有されれば強い共感が生まれ、お客さんとの絆はより強固なものとなります。
究極はお客さんを参加させること
最後の二つ(お客の声・ミッション)は、お客さんを参加させることに重きを置いています。ニュースレターは、お店とお客が一緒になって作るのが理想の姿だからです。
ニュースレター作りにお客さんが参加した時、ニュースレターは、真の関係性が育まれるのです。
ニュースレター作成で躓きやすい5つのポイント
実際にニュースレターを作成しようと思うと、躓きポイントが5つあります。
- デザインに悩む
- ネタがない
- コストがかかる
- 手間がかかる
- スタッフが嫌がる
一つずつ説明していきます。
1.デザインに悩む
ニュースレターを作ろうと思うと、まずデザインを考えなくてはいけません。このデザインを考える作業がひと手間かかります。
仮にも、美容室。センスが問われる職業のため、下手なものを出すわけにはいきません。また、あまりにも凝りすぎていてパンフレットっぽくなってもいけません。力加減が難しいです。
自分で作るのもいいのですが、デザイナーにお願いするのも手です。ただし、数万円は費用がかかります。もう一つの手段は、デザインのテンプレートの購入です。手間もかからず、コストも安くて済みます。
ほかのお店と被らないか、と気にする人もいると思いますが、まず被る可能性は極めて低いと言えるでしょう。1%にも満たない可能性を心配するよりも、手間とコストを考えた方が合理的でしょう。
2.ネタがない
はじめのうちは、ニュースレターのネタには困りません。しかし、1年、2年と続けていくうちに、ネタ切れに陥ることも。
特に、お客さんの教育になるためのネタで困るはずです。この問題を解決するのは、同じ話を違う表現で語ることです。
でも、ニュースレター作りを楽しんでいるうちは、ネタ切れには困りません。あれも話したい、これも話したいで、紙面をどう納めるかのほうに頭を悩ませるぐらいです。
ニュースレター作りは、モチベーションの高さがものをいいます。モチベーションがあるうちは、ネタには困りません。たかだか、月に一回のネタ作りです。そのネタさえ作れないのは、知識の問題ではなく、熱量の問題なのです。
関連記事:美容室が発行するニュースレターに使えるネタ10選
3.コストがかかる
ニュースレターは郵送するため、印刷代と運送費がかかります。1通あたりのコストは、大体100円前後です。やり方次第ではこれよりも安く抑えることはできます。
仮に100円だとして、700通送った場合、コストは7万円です。年に直せば、84万円になります。バカにならないコストです。
ニュースレターは、分かりやすい形でレスポンスが返ってくるわけではないと、冒頭でもお伝えしました。
レスポンスが見えないため、「あれ? コストに見合っているのだろうか?」といった疑問が生じやすいです。費用対効果を感じられず、挫折してしまう方もいます。
失客率の低下や継続年数の増減は、しっかり計測していないと見えてきません。加えて、セールスをしなければ、育てたお客に商品を売ることはできません。この二つをしっかりやれば、ニュースレターの成果も可視化できます。
関連記事:コスト倒れにならないためのニュースレター発送範囲
4、手間がかかる
ニュースレターの封入作業は、結構な労働量です。ニュースレターを封筒に入れ、封入口をテープで貼り、封筒にラベルを貼る。この一連の作業は、一通20秒ほどかかります。1分に3通です。単純に700件に送ろうとした場合、4時間は要します。作業場所も取りますし、忙しい美容師からしたらちょっと煩わしく感じるかもしれませんね。
この作業は、発送代行業者に投げてしまうのも手です。手間も場所も取らないため、苦にはなりません。封入作業が苦痛であるなら検討してみてはどうでしょうか?
関連記事:ニュースレターの発送業務、印刷から封入作業を簡略化する方法
5、スタッフが嫌がる
オーナーとスタッフとでは、経営に対する意識が違います。その差から、オーナーがニュースレターに積極的でも、スタッフが消極的なんてことも発生します。たかだが、数百文字を書くことさえ嫌がるスタッフも稀にいます。乗り気ではない人に無理やりやらせても、その気持ちはニュースレターに出てしまうものです。
乗り気ではないスタッフには、大きな紙面は預けず、A4の半分程度の小さな紙面を預けるようにしましょう。様子を見て、やる気が出てきたら紙面を増やしていくのがいいでしょう。
これさえ嫌がるようでしたら、ニュースレター云々という以前に、仕事へのやる気がない可能性が高いです。
SNSに逃げてはいけない
コストや手間、ネタ探しやスタッフの参加。ニュースレターの発行には、越えなくてはいけないハードルが色々あります。「そんなに大変ならSNSでもいいじゃん」と思うかもしれませんね。そう考えるのは当然でしょう。しかし、デジタル媒体とアナログ媒体とでは、人に与える印象が大きく異なります。アナログだからこその、五感を通じた情報伝達は、独特の味わいを持っています。
一番近い例を挙げれば、紙の本と電子書籍です。出版市場の売上は、紙の本が8に対して、電子書籍は2の割合です。スマホがあれば読め、しかも紙の本よりも安く買えるにもかかわらず、電子書籍の部数は全体の2割に留まっているのです。多くの人が機能性や経済性よりも情緒的な価値に重きをおいていると考えられます。
「SNS(デジタル)だけでいいのでは?」という考え方は、出版界でいえば、紙の本の市場を捨てることと同義です。どちらかではなく、どちらも併用して使い、お客さんとの接点を増やしていくのがいいでしょう。
手間がかかっているから意味がある
情報伝達の観点から見れば、ニュースレターよりもSNSのほうが効率的です。ただそれはあくまでも情報伝達のみで見た場合です。
真心を伝える観点から見れば、立場は逆転します。LINEで送られてくる「あけおめ」よりも、手書きの年賀状のほうが真心は伝わりますよね。年賀状のキャッチコピーに「年賀状は贈り物だと思う」があります。一つ一つに手間をかけるからこそ、贈り物になるのです。人間関係に効率を求めると、人間関係は育めません。
面倒で煩わしいかもしれませんが、人間関係を育むというのはそういうものなのです。お客さんと人間関係を育んでいくのなら、ニュースレターを作る手間暇を苦ではなく、楽しいものだと思って取り組みましょう。